釧路支部幹部大学同窓会は26日に恒例の文学散歩を開催し、釧路高専の小田島教授の案内で、武田泰淳が書いた『ひかりごけ』の舞台の羅臼を訪れました。戦後の文学界で異彩を放っている武田泰淳は、道東を幾度も訪れて『ひかりごけ』 『森と湖のまつり』などの傑作を世に出しました。中でも、十五年戦争末期に知床半島で遭難した輸送船の食人事件を題材にした『ひかりごけ』は、国家が引き起こす戦争の実態や道徳の欺瞞性などを暴き、戦後文学の最高峰として評価が高い作品です。
戦後、羅臼町のS青年が食人事件を書き記した郷土史を発行しました。その郷土史は数年して東京の古本屋に出回ります。それを武田泰淳が手にして『ひかりごけ』の着想を得ます。武田は羅臼を訪れてS青年と会って取材し、作品にも登場させます。そのS青年は後の羅臼町長を務める佐藤盛雄さんです。今回は今も元気に活躍されている佐藤さんを羅臼で囲んで『ひかりごけ』誕生のいきさつを学びました。
「当時は若気の至りで食人事件を郷土史に書いてしまった。それが偶然大作家の手に渡り『ひかりごけ』になった。資料収集も完全でないのに食人という重い内容を発表してしまい、当時は複雑な心境だった」と佐藤さんは語りました。
幹部大学同窓会は、釧根に縁のある文学の地を今後も訪れて学びを深めていく予定です。
▼羅臼のひかりごけ
▼羅臼の昆布漁
▼羅臼岳
▼S青年として『ひかりごけ』に登場する佐藤氏
▼羅臼町公民館で佐藤さんを囲む
▼輸送船が難破した海を望む参加者