釧路支部は1月23日に幹部大学第3講を開き、釧路公立大学教授の高野敏行氏が「私とは何か?」と題して講演しました。
高野氏はまずドイツの哲学者ハイデガーの思想を用いて「私」の存在について解説を行いました。「ハイデガーは『世界は舞台、人生は芝居、人は役を演じている』と考え、性別や年齢、職業などで説明される『私』を『非本来的な私』と位置づけた。さらにそれらの肩書きを全て脱ぎ去って残るのが『本当の私』であり、人は皆『本当の私』から目を背けていると考えた」と話しました。
さらに同氏はソクラテスとプラトンに触れ、「プラトンは師匠であるソクラテスが30年間様々な人と行った対話の様子を『プラトン全集』に残した。その中で魂は肉体が滅びると同時に魂の世界へ旅立ち、そこで様々な事柄の真理を見て、再び現世に戻り生を受ける。ソクラテスの対話はこの真理を思い起こすための作業であり、魂こそが本当の私であるとの独自の思想を展開した」と述べました。さらに「ソクラテスは長い間行ってきた対話について一切記録を残していない。これは対話そのものに価値を見出していたためではないだろうか。相手と討論し、相手の考え方、そして自分の思考のレベルが上がってより自由な次元へ登るのが対話であり、『本当の私は常に変化する』と考えていたように思う」と強調しました。
【釧路公立大学 教授 高野 敏行氏】